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case study02 「女性として、建築家として、母として」遠藤幹子 | ||||||||||
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第3回 無邪気な心、理解する目、応援する社会 今年の4月、スリランカの大学でデザイン科の授業、幼稚園の校庭の設計課題に講師として参加する機会がありました。初めに自己紹介も兼ねて自分の仕事について話をしたのですが、この国で大学に進むのはエリート中のエリート。皆さんメモをとったりうなずきながらとても熱心に聞いてくれました。が、気になったのがそのやたら真剣な姿勢。レクチャーのあと彼等の案を見せてもらいながらこんな質問が出てきました。「子供は赤や青の原色を好むと教わりましたが、先生はそれを正しいと思いますか?」、「グラスファイバーを使った遊具は子供に良いと思いますか?」など...。日本や他のアジアの国と同じように、点数競争で育ってきた彼等にとって教わることは知識を得ることのよう。だけど何がいい悪いというのは置かれている環境によって反転してしまうものだから、正解は教わるのではなく自分で見つけるものであるべきはず。一体どうやってその頭を柔らかくしようかという挑戦が始まりました。
私はオランダの大学院に留学しましたが、難しいことはあまり教わらなかったと思っています。ただヨーロッパの先生達に「本当にそれはおまえの正直な気持ちか?」と、デザインを通じて非常にしつこく問いただされました。正直パワーのトレーニング道場のようなもので、最後、カメラの回るホールで数十人の観衆と外国の有名な建築家達を前に「ねえねえ、これすごいでしょ、みんなも欲しいでしょ!?」と大声で言えるくらい自分が好きなものを見つけられたか、そういう学校でした。ヨーロッパの文化のすごいところは、そういう直球勝負の正直さを権力やお金のある大人達がきちんと受け止めるところです。私はオランダで遊具のアイデアを練りながら「本当にこんなものを作れるんだろうか?」と半信半疑になりながらブッ壊れたベッドみたいな模型を作り、恐る恐るクライアントや大工さんに見せました。しかし感動したのは、「あぶなくない?」とか「できるわけないよ...」みたいな逃げ腰な言葉を発する前に、まずみんな「面白そう、その話、乗った!」と参加して来てくれたこと。条件や方法の困難は力を合わせれば何とかなる、大事なのはこのアイデアの「キラーン!」と光る部分を実現することだ...というふうに。結局予算も大きな財団に追加資金を援助してもらったり、作る方法も大工さんが休日返上であれこれ考えてくれたり、子供みたいな私の発想を実現するために大人達がサポートしてくれたのです。
文化とは、こういうものなんだと思い知りました。若く無邪気な瞳の中に何か本質的な価値を見つけたならば、それを理解しサポートするためにひと肌脱ぐのが本当の成熟した大人社会といえるのでしょう。できるできないじゃなく、その人が本当にやりたいのは何かを見極めるオープンな姿勢。親としても、仕事をする人間としても、ショックなくらい教えられることの多い大きな出来事でした。 さて、正直な気持ちを表現するのを躊躇し小難し気な口調についなってしまうシャイなスリランカの若者達。彼等の目から何か「キラリ」とした無邪気な光を引き出すまで、何度も質問したり誉めたり叱ったりするのは楽しいものでした。まあ短期間でどれだけ役に立てたかは分かりませんが、嬉しかったのは一人の女の子に「あなたは先生であるのにまるで子供のようにピュアな目で私達の幼稚園を見てくれた。ありがとう。」と言ってもらったことです。私にとっての最大の先生、畏れ多い存在というのは、子供のようなオープンな目を持った大人、そして正直な子供達自身です。なぜなら、彼等は私自身が子供のように夢や輝きを追い求め、不可能を可能にしたいと思う気持ちを応援してくれるからです。
わたしが今どうしてもやりたいのは、オランダの大好きな尊敬する人達と一緒に子供に関するデザインの仕事をすること。それはそれで正直言ってハードルのとても多い挑戦なのですが、今日本に一時的に帰り資金作りなどをしながら思いを馳せると、やっぱり心が「キラーン!」と光ります。どうも、どうしても好きなようですね。(2002/08/10)
illust&photo(c)Mikiko Endo |
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