case study02
「輝くこどもの遊び環境」
(新テーマ) 遠藤幹子

第1回 イントロダクション


(C)Mikiko Endo

●はじめに
オランダと日本を行き来しながらしばらく定住先を決めかねていましたが、ようやく日本に根をおろして活動を広げて行くことに決めました。そしてmother dictionaryを通じた方々との関わりの中で、これからの自分がライフワーク的に取り組んで行きたいと思えるテーマが、だんだんクリアになってきました。そのテーマ「輝くこどもの遊び環境」について、このコラムを通じて紹介させていただこうと思います。

mother dictionaryを通じて編集の新堀桂子さん、桑原紀佐子さん、建築家の相澤久美さんらと集まる機会が増え、そのなかでこどもと大人が集まる良質な場づくりをしてゆけたら、という話題が増えてきました。こどもカフェ、ワークショップ、公園、児童館、教育施設..そのアイデアはいろいろ膨らみますが、実際に社会に根付かせるためには資金や公の理解、多くの方の参画を得るために念密なオーガナイズが必要です。そこでNPOを立ち上げて、長期的な計画として具体的にアクションを起こして行こうというムードが高まってきました。「輝くこどもの遊び環境のための非営利事業団」設立です。

まだ始まったばかりのプロジェクトですが、この活動を通じて集めた情報や見えてくる問題、そして実際の構想などについて、このコラムを通じて段階的に紹介させていけたらと思います。このcase studyを読んで下さる方々からの反響や情報提供、また例えばワークショップなどの参加のご協力通じて、大きな力へと育んでゆき、いずれ実際のプロジェクトとして花を咲かせてゆけたら最高です。

●「輝き」
オランダで出産・子育てをしている友人から、「街中でみかけるこどもたちの目の輝きがちがうよね..」という言葉を聞きました。たとえば都会の電車の中でも、こどもがこどもらしく、自分に自信を持って、明るく、好奇心に溢れたキラキラした目をしているよね、という話です。

以前紹介した『輝くアムスの保育園』はアムスの自由の象徴。その人がその人らしく生きるために本当に大切なものをしっかりと受け止め、競争も、力の誇示も、押し付けもない。キラキラと透き通って、澄んだ空気が流れ溢れるような場なんです。こどもにとってのパラダイスであると同時に、大人にとっても大事なもの、生きる喜びや責任についても学ばせてくれるような場所。





そういう前提も解釈もなしに全ての人を感動させてしまう本質的な価値を、私は「輝き」ということばで表現します。輝いているものには人を惹き付ける天性があります。「あんな夢のような場所があったら、いいよね!」という声を、コラムを読んで下さった方から本当にたくさん頂きました。

●オランダの教育や芸術に対する理解
オランダにいるとまるで社会主義のような空気を感じることがあります。教育や公共サービスに対する理解が深く、良質なライフ環境を提供することを社会が一丸となって協力しているように見えます。公園、図書館、カフェ、お店でも、意識的に良質なものを提供しているところが多く、それがまたどれもいいデザイン。辛気くさい、マイナーなイメージが本当に少ないのです。

芸術性、デザイン性というのは本当に大事なもので、分かりやすく言えば「かっこいい!」「すてき!」そして「すごい!」「感動した!」ということです。どれだけ社会的に意義のある活動でも、なんかダサイ匂いがしたら人は着いてゆく気がしないでしょう。人を引き込む力、その魔法のようなものに対しオランダ、ドイツ、デンマークなどの北欧方面の先進国などは理解が深く、とても豊かな文化として私達の目に映るのです。

●日本で
日本の場合、たとえば公共の学校や図書館、公園の整備などを見て、持っているお金を何に投資するかという点ではまだまだ意識が遅れていると感じます。合理性や無難なものへ重点が置かれることが多く、クールに見えないのは本当に残念。民間の商業施設では集客や売り上げが優先されることが多く、もちろん世の中を回すためにそれが必要なのは承知だけれども、その波に乗っていないと取り残されているかのような競争意識を感じるのも、なんだか残念です。日々の暮らしや人々の表情、そして物騒な殺害事件やひきこもりなどの問題についての報道を見るたびに、本当の価値観、「なにか大事なものが忘れられていない?」と感じることがあり、それが社会全体が抱える意識のありかたの問題のような気がしてならないのです。

東京の商業真っただ中でデザインの仕事を忙しくやって来て、一度外に出て頭を冷やさないとこの先限界があるのでは?と思い、オランダに移住しました。そして4年後戻ってみて、「スローライフ」「エコロジカル」などの言葉がずいぶん定着しはじめていることに驚きました。人々の意識が、上へ上へという競争的な価値観から、もっと世の中全体のことを考えて行こうという全体意識に向かっていることを確かに感じます。メディアや企業の商品開発、財団の助成や民間のイベントがそういうムードを広めていることは本当に素晴らしいことで、mother dictionaryを通じたおつき合いの中でいろいろなことを勉強させていただきました。私も一人の建築家・母として、「環境づくり」という分野でなにかかたちに結べそうだ、という大きな力を与えていただいているのです。

どの社会でも長所と短所を併せ持つものでありますから、日本のこれはこれで良いところがたくさんあるのだと思います。オランダ人はオランダの嫌なことばかり目につくようですし。なので今の体勢を否定するつもりはありませんが、とにかくその中で、「そこで私達の目は本当に輝いている?」ということをいつも問いかけるのは大事なことではないかと思います。日本の人にも海外の人にも、「いいね!」「よかった!」と思ってもらえるものを一つ一つ実現するなかで、いま感じているジレンマは少しづつ薄らいでゆくのかと思っています。

●場づくり コミュニティ
建築家の相澤久美さんが、東麻布の自宅兼事務所にfooという空間を運営されています。そこで、mother dictionaryに関わるトークライブやミーティングなど会合する機会が増えました。その中で、人と人が出会い何かをやろうとする「場」というものの力のすごさを私達は実感しました。


左:foo外観。通りから見ると背の高い電話ボックス?
右上:入り口奥にオープンスペース。パーティーや会合などさまざまな使い方が。
右下:3階相澤さんの住居スペースから。2階は事務所。建物がさまざまな機能を持ち、人 に開かれています。


同じような目的と意識を持った人と出会える場所というのは、インターネットなどでは盛んに開かれていますが、実際に肌と肌が近くなるコミュニケーションの場というものは、なかなか個人の力では作れません。赤ちゃんはお母さんにだっこされていると安心だし、恋人と一緒にいたいのも同じ。「界隈」と言われるコミュニティが少なくなってきている中で、顔見知りで、気軽に行けて、安心してこどもを遊ばせられる場。そんな素敵な場をもっと身近に積極的に作ってゆけたら素晴らしいことと思います。

オランダの例になりますが、娘が0歳の頃からよく通っていた「こどもカフェ」というのがありました。こどもの遊び部屋があるカフェで、手軽な値段で場所と食事を用意しているのでリピーターが多く、外国人として都心部に住みながらもそこでいろんなお母さんとお友達になることができました。次回はこれを紹介しようと思います。



左:多くのパパさんママさん、こどもたちで賑わっていた。残念ながら2000年に閉店。
右:週に3日は通ってました。


●これからの動き
10年、20年を見越したとても長いスパンの話になると思います。まずは非営利事業団のようなかたちを立ち上げて、助成金を集めたり、調査を行ったりしながら具体的に何ができるのか、構想を練ってゆくことと思います。ゆくゆくは恒久的な空間を企画設計し運営するのを目指していますが、テンポラリーなワークショップやイベントを通じた人とのつながりやソフトの充実も大事な活動です。

公共でも民間でもない、その間を流れるような第三のバランス感覚で、かっこよく、社会的に意義があり、そしてみんなが楽しく過ごせるこどもと大人のための環境づくりを目指してゆこうと思います。 皆様からの御支援、どうぞよろしくお願いいたします。(2003/07/15)

●質問
今後の活動の参照にさせて頂きたく、みなさんの遊び場環境について、お聞かせ下さい。

Q1. みなさんの周辺には、子どもが目を輝かせて遊べて、
大人も安心して子どもを遊ばせることのできる場所がありますか?

Q2. あると答えた方、それはどんな場所で、どんな風に使われていますか?
  ないと答えた方、お子さんはどんな場所で遊んでいますか?

Q3. お子さんの遊び場環境に望むことがあれば教えてください。
(虫採りができるような自然環境がほしい、大人も一緒にくつろげる場がほしいなど、ご自由に。)

Q4. 差し支えなければ、お住まいの都道府県名、お子さんの年齢を教えて下さい。

下の「はなす」をクリックしてcase study bbsまでお答えをお寄せ下さい。
その他、今回の原稿に対するご意見なども歓迎です!






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