case study13
「母子保健から見る世界(仮)」石井澄江

第3回 1700対出生10万 〜戦禍と女・子ども〜


mother dictionaryより
石井様。イラクへの武力行使によって予想される妊産婦や乳幼児の死亡率の上昇をニュースが伝えていました。それは日本に暮らす私達には想像もつかない数字でした。情勢が不安定になったことで、既に妊産婦や乳幼児への影響が出ているとも聞きました。ジョイセフの活動を通して見てこられた、戦争・紛争が女性や子どもに与える影響について、お聞かせ頂けますか?



1700対出生10万。何の数字かお分かりでしょうか?
これは、アフガニスタンの女性が妊娠/出産が原因で亡くなる数字です。日本の実に300倍近い高さです。何故アフガニスタンでこんなにも多くの女性達が妊娠/出産が原因で亡くなるのでしょう? 大きいものをあげると戦争と宗教(タリバン)です。
イスラム教徒の女性は男性との接触を厳しく規制されます。女性は女性の医師でなければ診てもらうことはできません。その一方で、前タリバン政権は女性が職業につくことを禁止したため、全ての職場から女性がいなくなってしまいました。さらに戦争により病院、クリニックをはじめとする医療施設が破壊され、必要な医薬品までもがなくなってしまったのです。女性は出産をするにも医療施設はない、薬もない、そして医療スタッフもいない状況で、自宅で親類縁者の女性達に囲まれての出産となるのです。まさにお産は命がけ。出血があろうと、産後の調子が悪かろうと、生まれた子どもに問題があっても専門的な治療は受けられないのです。
生む性である女がその身で戦争、宗教によって引き起こされる妊娠/出産のリスクを負わなければならないのです。


  *
アフガニスタンのある村で、一人の女が赤ちゃんを産んだ。
彼女はカーテンの陰に隠されていた。男の医者が、彼女を診ようとしていた。
しかし夫は、不道徳的だと拒み、医師は女性の顔を見ることもなく帰った。
女の声:
一度でいいから、医者に診てもらいたい。
私が夫以外の男と会うのは、不道徳だと夫が思うことは知っている。
だけど痛みがとてもひどくて、誰かに治して欲しい。
生まれたばかりの赤ちゃんの世話が出来るくらいに。
女の医者さえ来てくれれば。彼女ならこの出血を止めてくれる。
だけど女はもはや仕事をすることを許されていない。
宗教的指導者が、女性は家にいて、働きに出るべきではないと言った。
それはアラーに対して恥ずべきことであると。
だが、どうして女性の命を守ることが罪なのだろうか。
(国際家族計画連盟制作「ライフライン」(視聴覚資料)より)
  *


mother dictionaryより
人々を抑圧する宗教や政権、長く続いた内戦、それらからの解放も大義名分にした他国の武力介入。いずれもの陰でリスクを負う人々がいることに胸が痛むと同時に解決の難しさを感じます。今、世界は再び問題や対立を解決する方法を選択する岐路に立っていますね。子ども達に武力解決という図式を残したくなく、個人的には武力行使にNO!ですが、NO!に代わる代替案を持つことが、付け焼き刃的な関心や知識では難しいことも感じています。保健を通して世界と関わっていらっしゃる方々の視点、今度そんなお話もぜひ聞かせて下さい。(2003/03/15)








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