case study13
「母子保健から見る世界」石井澄江

第7回 エイズはいま、女性、子ども、若い人たちの問題なんです。


昨年夏、石井さんに会った時、エイズの問題が大きいアフリカを中心に、紙芝居制作などを通してエイズの啓発教育活動を行っていることを聞きました。日本では、現実には感染が広がっていながら、私たちの意識の中から遠くなっているエイズの問題。感染が広がるということは、どういうことなのでしょうか?そこにどんな取り組みが必要なのでしょう?改めてお話しを伺いにジョイセフを訪ねました。/聞き手:mother dictionary(新堀桂子、桑原紀佐子)、ユーゴ



『現在のエイズ感染者』
グローバルで400万人。
一日あたり1万4千人が感染している状況。
(うち95%が低所得者/うち2千人が15才以下/うち15歳から49歳の1万2千人の感染者の50%が女性)

石井澄江(以下、石井):エイズはいま、女性、子ども、若い人たちの問題なんです。日本のエイズも若い人たちに一番増えているんです。家庭の中で、夫から妻へ、妻から子どもへ感染がどんどん進むわけです。女性の膣の方が男性器よりも粘膜の表面積が大きいから、生物学的に女性の方が感染のリスクは高いんです。

新堀、桑原、ユーゴ:うーん…。

石井:世界的には、アフリカにおけるエイズが本当に大きな問題になってきているんですね。働き盛りの人たちがどんどん亡くなっています。両親が死んでしまい、多くの子どもたちがエイズ孤児になっています。国の経済、社会、安全保障にも深刻な影響を与えてきています。農業生産とか工業生産が落ちてしまう一方で、医療の負担が増えるわけです。お医者さんや看護師さんなども亡くなっているので医療の質も低下しています。せっかく保健が向上して伸びてきた平均寿命もおっこちてしまっている。十歳も差がでてる国がたくさんでてきているんです。

例えば、ザンビアでは日本の援助で小学校をいくつか建てましたが、建物ができてもエイズによって先生が減っちゃった。アフリカの多くの国では自分の周りで日常的にエイズの死亡がある状況です。ただ、エイズに対する偏見はまだものすごく強い。その偏見がもっと状況を悪くしている。偏見が強いために、差別されてしまう。だから、どんなに「検査しましょう」といっても効果がないんです。

エイズといっても、飲む人に合った薬、合った処方をきちんとやるとかなり発症を抑えることができるんですね。母子感染もお母さんが早く陽性だとわかれば、先進国の場合、薬を飲んで、帝王切開して、人工授乳にすればほとんど子どもへの感染は防げるわけなんです。 でも、それにはいろんな要件があって、まずお母さんが検査を受ける。感染がわかったら薬を飲まなければならない。で、薬が届かなきゃいけない。薬が届いても帝王切開しなければならない。ミルクを買わなければいけない…。

桑原:ミルクを買うお金や、帝王切開できる環境も無かったりするのですよね。

石井:そうなんです。全体が関わっているので簡単にはいかないんですね。治療のための努力をし、もう一方で感染しないための努力をしなきゃいけない。両方一緒にやる努力をしないと効果がないんです。ところが、エイズは怖いというイメージと性のモラルと結びついているから、口にしようともしない。みんなで話すこともしない。われわれがアフリカでエイズ教育のための紙芝居を作ったのは実はそういう背景があってなのです。

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