case study13
「母子保健から見る世界」石井澄江


「差別」とか「偏見」とか、なくそうというのは簡単だけど
自分の中に絶対あるんです。

新堀:エイズ感染者の親をもつ子どもの保育園通園が拒否されたという新聞記事を読んで、ひどいなと思ったんですが、例えば自分の子の保育園で同じことがあったらと想像してみると、全然違う自分がいたりしました…。

石井:そうそう、頭と感情は別でしょ。「差別」とか「偏見」とかなくそういうのは簡単だけど自分の中に絶対あるんです。それってそんなに簡単にとれない。一生懸命意識してやろうとしていてもできないことはすごくあります。ただ、意識ができるかできないかがすごく大きいと思います。日本だって差別や偏見がものすごくあるから感染者の人たちは大変ですよ。カミングアウトなんてそう簡単にできないですよ。

ユーゴ:ゲイのともだちとかエイズの検査に行きたくないって言いますよ。やっぱりこわいし。この間もエイズの子に会ったんですけど、やせちゃって。

石井:発症してらっしゃるんですね。治療はしてらっしゃらないんですか?

ユーゴ:治療はやっているらしいのですが、具合が悪そうでした。

石井:やっぱり副作用が強いんですよね。副作用が強いし、人によっては合わない。それからウイルスに薬への耐性ができちゃうこともあるんです。耐性ができちゃうと薬をのんでも効かない。

新堀:また新しい薬がでるまで手のうちようがないわけですよね。

石井:薬を代えてもダメなときは厳しいですね。それも大きな問題なんですね。感染者のケアやサポートと同時に、新規感染者をいかに少なくできるかも大切なんです。われわれが力を入れていることはそれなんです。自分たちで自分の命を守るということ、エイズに対する認知度をあげて、みんなでオープンに話せるような環境をつくる。これがジョイセフがエイズという病に対してできる最大限の仕事だなと思います。

昔は同じことが家族計画であったんです。昔は「避妊」っていうことが言えなかったんですね。でもそれが言えるようにならないと、女性はしんどくても相談もできない、産婦人科にも行けない。それを「これは恥ずかしいことじゃないんだ」と、家族計画をみんなで話せるような村づくりをした。そこではじめて女性はクリニックにもいけるし相談にもいけるようになった。それと同じことをこれからエイズもやらなくちゃいけないんです。

それぞれ(の機関、団体)の得意とするところが違うから、それぞれがひとつひとつおさえつつ連携していかないと全体の効果がなかなかでてこない。われわれの場合は予防を中心としてやっているわけです。差別の偏見をなくしていきたい、完全にはもちろんなくなりませんけど、この紙芝居(*1)のように差別や偏見で死ななきゃいけないなんてことが絶対ないようにしたいんです。
(2004/04/15)


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紙芝居(*1)
ジョイセフがタンザニアの村人と共に制作した紙芝居『終わらないサヨナラ〜The Endless Goodbye〜』。病と偏見から家族を次々と失うひとりの少女の身に起こった実話に基づくストーリー(前回参照)。現在、タンザニア、ガーナを中心に、村の保健ボランティアによるエイズ教育で活用されている。






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