case study13
「母子保健から見る世界」石井澄江

第11回 ジョイセフトークショー「エイズ撲滅のために、私たちにできることは」



エイズ撲滅のために、私たちにできることは

大野:ひどいですね。そういうアフリカの悲惨な状況の中で、ジョイセフさんは、今、援助活動をしてらっしゃるということで、どういうことをされてるんでしょうか。
NOBU:ジョイセフは1980年代から、先ほど言ったガーナ、タンザニア、ザンビアの3カ国を中心に活動してます。各国の家族計画協会というNGOをパートナーとして活動してきてます。1999年くらいまでは家族計画の普及と、母子保健(母と子の健康)それと寄生虫の予防、栄養改善、そういうものを組み合わせて活動してきました。ジョイセフの活動地域は農村地域なんですが、農村地域っていうのは保健センターがポツンとあってそれが広い地域をカバーしなくちゃいけないと申し上げましたが、そういう状況なので、保健ボランティアを育成してきてるんです。要は、保健医療従事者が少ないので、村レベルで保健の知識を持った人たちを養成して、その人たちが他の村の人たちに、保健に関して知識を共有しながら、保健活動を進めていくのです。
大野:エイズの活動なんですけれども、いつごろから始まったのでしょうか。

NOBU:エイズそのものは2000年ぐらいから取り組んでます。それまでは、先ほども言ったように、家族計画が中心だったんですが、視察に行ってボランティアさんと話をする中で、実はうちの村で、エイズで人がどんどん死んでるんだという話を訴えかけられたんですね。何とかして欲しいと。じゃあ、取り組んでいきましょうということで始めたんです。
大野:ジョイセフさんは母子の保護を中心に活動されてると思うんですけれども、エイズの母子感染を予防するということではどういう活動を行っているんでしょうか。
NOBU:そうですね。まず差別や偏見をとにかく軽くしていかないと、お母さんたちがHIVの検査を受けようと思わないわけですね。HIVの検査を受けて差別されるくらいだったら受けない方がいいって。ですから、とにかく差別を軽減させるってことが非常に大切です。
その上で、お母さんたちにHIVの検査を受けようと呼びかけていく。HIVに感染してないお母さんたちには、感染しないよう予防を徹底してもらう。それから、HIV陽性になってしまったお母さんたちが望まない妊娠をしないことが非常に大切です。HIV陽性ってわかってるのに、妊娠して、出産しなくちゃいけない、自分は本当はそれは望んでないんだ、みたいな中での出産が起こるってことがないように。それからHIV陽性の妊婦さんには、子供に感染しないように、先ほどのような医療介入が少しでもできるよう政府の医療保健施設との連携をしています。それから、伝統的助産婦さん、昔のお産婆さんのような人たちがいるんですが、そういう人たちも私たちは訓練をして、その連携がうまくいくようにしています。それから、HIV陽性のお母さんに対して少しでも感染確率の少ない授乳方法を指導する。感染してるってわかってても、赤ちゃんにおっぱいをあげなくちゃいけない。じゃないと赤ちゃんが死んじゃいますからね。感染の確率を少しでも減らすために、6ヶ月間はおっぱいしか飲ませない。ほかのもの、例えばジュースだのをあげちゃうと感染しやすくなるという研究がされてますので、とにかく6ヶ月間はおっぱいだけという指導をしていくということですね。
大野:向こうでの活動してる時のお写真などもあるんでしょうか。
NOBU:はい。この方は、グロリアさんという、ザンビアの陽性者の方です。HIV陽性者の方。3歳7ヶ月のお子さんがいらっしゃいます。残念ながら、お子さんも陽性です。彼女は、HIV陽性であることを公にして、ほかの人への教育活動に自ら加わることを決心されて、われわれの研修に加わってくださった。彼女は今、週1回、保健所に来る妊婦さんたちに、自分はどうやって感染してしまったのか、赤ちゃんに感染させないためにどうしたらいいのかということを啓発されてます。陽性者の方が自ら語る言葉っていうのは、やっぱり非常にパワフルなんですね。ですから、お母さんたちも耳を傾ける。
大野:はい。

NOBU: ちなみに、ジョイセフはタンザニアの村の人たちと一緒に、紙芝居を作りました。これは実際にあったお話を脚色したものですけども、これを保健ボランティアさんたちが村の人たちに読み聞かせて、ディスカッションをするんです。先ほども言いましたけども、差別偏見がまだ強い。HIV、エイズのことをオープンにみんなで語る機会がないわけです。ですから、まずその壁を破る。一人の少女に起こった実際のストーリー、親がエイズで亡くなるわけですけども、そのストーリーを通して感じてもらう。感じてもらって、その後にいろんな個人的な経験みたいなのが、パーソナル・エクスペリエンスが話されるようになってくる。実は同じことが私の孫にも起こったのよ、みたいな、そういう話が出てくるようになると、少しずつ変わってくるかなと思います。それから、日本から駅前などに放置された自転車を、自治体との協力で再生して海外に送る事業というのもやってます。ザンビアの田舎の方は広いですから、これで移動がかなり可能になります。

大野:この自転車の話とか、ジョイセフさんに聞いて初めて知って、すごく画期的な素晴らしいことだと思ったんですが、私たちには今、何ができるのでしょうか。
NOBU:そうですね、まずはしっかり情報を知っていただくということが、非常に大切です。それと、先ほど由美子さんがおっしゃったように、自分たちの次世代、子供たちの世代にも影響してくる大きな問題としてぜひとらえていただきたいということですよね。
大野:そうですね。女性の問題みたいに話してますけれど、男性にもとっても深刻な問題だと思います。女性の地位ということに対しても、やっぱり男性もからんでるし。
NOBU:そうですね。世界でどういうことが起こっているのか、ぜひみなさん関心を持っていただきたい。それともう一つ、アフリカへの支援をどんどん呼びかけていただきたいと思います。今、政府は政府開発援助、海外への支援を減らそうとしています。でもこういう状況だから必要だっていうことを、ぜひ、みんなで訴えて、大きな声にしていただきたいと思います。
大野:そうですね。大きな声の一つで、 “SAVE MOTHER from AIDS”というキャンペーンを実施中ということですけれども。
NOBU:はい。去年の12月1日から“SAVE MOTHER from AIDS”というキャンペーンを始めましたが、実はまだまだ知られてない。今回のこのようなトークショーはとてもいい機会で、キャンペーンのことを一人でも多くの人に知っていただいて、ご支援いただけたらと思ってます。支援の方法は3つあります。1つめは、ジョイセフがやっていること、またはHIV、エイズの日本の状況、世界の状況などを、ぜひほかのみなさんに伝えていただきたい。それから、2番目の支援の方法として、チャリティーグッズを作ったんです。今回、クラブキングさんとの協力で、サルビアのセキユリヲさんにデザインをお願いして、お買い物バッグを作りました。1,900円です。ちょっと高いなって思われるかもしれないんですが、100%オーガニックコットンで、セキユリヲさんのデザインですから。ぜひお買い上げいただきたいなと。
大野:その中から、15パーセントが寄付されるということになってますね。
NOBU:そうです。あともう一つは、募金に協力していただくということです。募金に関しては、そのまま現地の活動のために使わせていただきたいと思ってます。
大野:ジョイセフさんのホームページにもネットショップがあるんですよね。そちらでも購入できるということなので、ここにいらっしゃる方、それからお友達にもぜひ教えてあげて、支援の一つになるので、ご協力をお願いしたいと思います。
司会者:質問や感想のある方、ぜひ、挙手を挙げて、どうぞ。
Mさん:僕も、エイズのことについて無知なんですけども、どうすれば防げるのかなと。もちろん、コンドームとかそういうのはあるんですけど、もっと意識的なところで、みんなが真剣に考えないと防げないと思うんです。一人一人がどうすれば防げるのかなっていうことを、考えみたいなのがあれば聞きたいです。
NOBU:はい。基本的な知識っていうか、HIVがどうやって感染するか、どうやって防げるかといったところは、ほとんどのみなさん、ご存知だと思うんですね。でも、その予防策を実行しないというのが、現実だと思います。なぜしないのかっていうと、やっぱり自分のこととしてはとらえきれていないからだと思うんですね。今まで私たちがやってきたのは、知識教育が多いと思うんですよ。でも、いくら知識が増えても、自分のこととしてとらえられないと、結局何も変わらない。単なる知識で終わってしまう。頭だけじゃなくて心でも感じていかないと、人の行動は変わらない。タバコなんかもそうですよね。肺がんになる確率が高いってあちこちで言われてても、絶対やめない人ってたくさんいるわけでしょ。ですから、人の感情的な部分に触れていく。そういう情報の提供の仕方をしていく。またはそういうものに関心を抱いて、そういう情報に触れていただく。例えば、HIVの陽性者の方々の手記みたいなものも出てますし、インターネット配信や、ドラマ、HIVに感染した方をモデルにしたようなドラマですよね、そういうものを見ていただくとか。または、由美子さんの世界ですけども、音楽に触れていただくとか。そこで知識と感情が組み合わさって、それで行動が変わっていくかなと。

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