case study19 第4回 阿佐ヶ谷住宅と暮らしの知恵

 
明かり窓

私達家族の住む長屋型のテラスハウスは珍しいらしく、見学にいらっしゃる方もいます。
建築を学んでいる方がテラスハウスに足を運ぶと「おお…FIXガラス」と感嘆の声をもらします。
「FIXガラス」はテラスハウスをデザインされた前川國男さんの特長とも言える手法だそうです。
隣り合う壁の上部がガラスになっていて「明かり窓」としての役割を果たしています。

もちろん全ての壁に「FIXガラス」が使用されている訳ではなく、「巧みな知恵」と共に使用されています。
我が家のテラスハウスの場合は
・「トイレ/玄関」
・「台所/お風呂」で使用されています。

トイレの電気をつけると「FIXガラス」により隣にある玄関も明かりが照らされ、その明かりが玄関扉の上にある「FIXガラス」により玄関前も照らされます。

ガラスの種類にも気づかいがされていて、上部とはいえ「トイレと玄関」を繋ぐ「FIXガラス」は「すりガラス」。
玄関と外を繋ぐ「FIXガラス」は「透明なガラス」になっています。
あまり広くない玄関もトイレも「FIXガラス」により開放的な空間となります。

そしてなにより経済的です。
「FIXガラス」が無ければ、玄関前/玄関内/トイレとそれぞれ明かりをつけなければなりませんが、トイレの電球をつけて置くだけで全ての明かりが確保されます。

隣り合う「台所とお風呂」にある「FIXガラス」も然り。
台所を使用していればお風呂場の明かりが確保され、お風呂場を使用していれば台所の明かりが確保されます。
両方をつける必要はありません。

素晴らしい技術だと思います。
初めて知った時は日本人らしい心使いだと感じました。

ただ、最近は震災時の危惧や設置の手間さから一般住宅への「FIXガラス」の需要はあまりないようです。
耐震性の高いガラスに似た素材などもあるようですし、こうした地球にも優しい「粋」な計らいが受け継がれると良いなぁと使う度に感じてしまいます。

 
屋根
テラスハウスの屋根は真横から見ると少し不平等な「三角屋根」になっています。
2階の天井がそのまま屋根の形同じく、三角になっていると思う方は少ないようです。

2階は9畳の和室です。
まん中にガラスの鴨居があり、部屋を2つに分けれるよう鴨居と共に柱が渡してあります。
正確には4畳半の部屋が2つ。
分けて使うこともできます。
眠る時に斜の天井やガラスの鴨居やを見ているとなぜか船中にいるような気分にもなります。
トタン屋根に雨があたる音を聞いている日はなおさらです。

 
水仙
阿佐ヶ谷住宅で3度目の冬を迎えました。
毎年お正月を過ぎると、阿佐ヶ谷住宅は「水仙」が咲き乱れ、それはそれは狂おしい香りに包まれます。
お花屋さんで見かける「水仙」よりも香り高く、ピンッとまっすぐに咲く様は本当に美しかったです。

今年は昨年の木々の伐採により、咲く準備をしていた水仙が踏まれたり、切られてしまいました。
昨年見事に咲いていた花々はまったく咲きませんでした。

別の木々に隠れ成長した水仙だけがひっそりと咲いていました。
ただただ、静かに自然を全うする花々。
何か大切なことを問われている気がします。

 
記録
その空の広さと緑の多さから、阿佐ヶ谷住宅内の撮影をされている方々を良くお見かけします。
いろいろな方のフィルターを通した「阿佐ヶ谷住宅」が記録されていると思うと私までとても嬉しいです。

そして、絵で記録をされている方にも出逢いました。
写真のように忠実でなくても勢いが伝わってきます。
木の存在感や空気感。

お人柄が伝わる絵に魅了され、布バックに沢山の阿佐ヶ谷住宅の絵を書いてくださるようお願いをしました。
エコロジーバックです。
沢山の方々に持って頂いて、阿佐ヶ谷住宅があちらこちらへ旅をしたら愉しいなぁと思っています。
消えてしまう風景なので、いろいろな形で「カケラ」を残したいです。
写真だけでなく、使い込まれる記録も良いかもしれません。

 
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