case study19 第7回 最後の夏
 
蝉と鈴虫
阿佐ヶ谷住宅

阿佐ヶ谷住宅の夏は情緒もないくらいに蝉たちが鳴きます。

散歩をしながら木々に目をやると無数の抜け殻。
にぎやかなはずです。

暑さが過ぎれば、鈴虫の大合唱。
季節のめぐりを外の音からも感じられます。

来秋、鳴いている子たちはどうなるんだろう…と思うと胸に痛いです。

 
木々達の生命力
阿佐ヶ谷住宅

現在再開発は決定していて、開始時期にゆれています。
複雑な考えから木々は開発開始前でもバッサリ切られています。
剪定という名からは程遠いほどに枝を切られたリ、根元から切られたり。

心にざらっとしたものが残りながらも、発言はとても難しく見ないふりをしていました。

チェーンソーの音はけたたましく響き、トラックで運ばれる木々の残骸の多さに驚かされます。
でも、見ないようにしてきました。

うちの近所では昨年、さるすべりの木の枝がすべて切られ、裏にある丸く繁っていたみかんの木は根元から切られました。
寂しくなった風景を傷口を見るような気持ちで過ごしていました。

今年、夏を迎え、さるすべりは今までよりも小さいものの咲き誇りました。
みかんの木からは小さな芽が。
すごいと思いました。
また、切られてしまうというのに…。

木々達は人間とは関係なく自分たちのリズムで生を刻んでいます。
切られても再び芽吹きます。
誠実に生きています。

木が切られ、こんなにも心が痛む気持ちを感じたのは「目の前の木」が切られたからです。
正直に言えば、環境問題は頭ではわかっていても、日々のことに追われここまで切実に身を切られるような思いでは考えられていませんでした。
どこか対岸の火事だったと思います。

地球では「目の前の木」が根元から切られることの何百倍も容赦ないことが起きています。

ここの緑に気づかせてもらったことを通していろいろな出来事をリアルに想像し生活していきたいです。
少しずつでも出来ることを増やしていきたいです。

 
どんぐりと松ぼっくり
阿佐ヶ谷住宅

昨年の秋はバスケットを持って、どんぐりを拾いに行くのが息子の日課でした。
今年は夏の終りにどんぐりの木が切られてしまいました。

昨年は拾ったどんぐりを友人に「阿佐ヶ谷住宅の形見わけだね」なんて言いながら配っていました。
埋めたどんぐりは春にはまっすぐな枝が伸び、本当に形見わけが出来てしまいました。
今年も…と思っていたので残念です。

 

突然切られたどんぐりの木に落ち込む息子と散歩をしているとたわわな松ぼっくりの木を見つけました。
風とともにボトボトと空から落ちて来ます。
見上げると無数の黒い点。
空から落ちてくる松ぼっくりに息子も大興奮です。

沢山かかえて家に帰りました。
もちろん満面の笑みです。

 
さるすべり
阿佐ヶ谷住宅

夏から秋にかけての見頃は「さるすべり」。
阿佐ヶ谷住宅内に沢山あります。

夏独特の青い空、狂おしいほど色鮮やかな緑の中に咲く姿は暑さを忘れ見入ってしまいます。
本当に本当に綺麗です。

自然の色に助けられ気持ちの良い写真が撮れる季節です。

 
絵本と童謡
阿佐ヶ谷住宅

3歳を迎えた息子は絵本「はらぺこあおむし」や歌が大好きです。
季節の童謡を歌っています。

杉並区とは思えない程の自然の中で暮らしているので、虫たちも身近です。

実際にあおむしや赤とんぼを見つけた時の喜ぶ姿はなんとも言えません。
こういう喜びと共に育って欲しいなと強く感じます。

 
鳥の巣
阿佐ヶ谷住宅

「窓の外の杉の木に鳥が巣を作り始めてる」と聞き見に行ってきました。
室内から良く見える場所でした。
材料はビニール紐や小枝。
夫婦でせわしなく作っています。

翌日には卵まで産みました。
息子は大喜び。
「早く赤ちゃんを見たいねー。」と温めにくる親鳥を応援していました。

そんな時間も束の間。
次の日にはカラスがやってきて次々に卵を飲み込んでしまいました。
あっという間の出来事に息子は号泣。

自然の出来事とは言え、息子が初めて直面した現実でした。

 
散歩
阿佐ヶ谷住宅

私はどうしても後ろを向きがちで心が滞ってしまうことが多いです。
誰しも少なからずそうなのでしょうが、自分のバランスの取り方が見出せず迷っている時期がありました。

そんな時、知人から「この前、庭にある梅を取ろうと無心に梅の木に触っていたら気持ちがとても落ち着いた」と聞きました。
好きな映画の中にも「森に行くからこの国の人は穏やかなんだ」というような台詞があったり。

「そうか」と思い、意識的に阿佐ヶ谷住宅をぐるりと散歩するよう心がけました。
洗濯やごはんを作るように生活にかかせない事柄として。

最初はやらなくてはならないことが頭から離れなかったのですが、次第にいろいろと忘れていた事に気づくようになってきました。
空は日により変化し、当たり前ですが、雲の形も季節により変化します。
時期をすぎたと思っていた花が咲いていたり…。

「陽や風のあたり方が違うから開花の誤差があって当たり前だよなー」と解釈しながらついつい一緒でないと不安になる気持ちを想ったり。

木々が作る影の美しさにため息をついたり。

散歩の習慣は私の大きな転機となりました。
大袈裟ですが生きていく上での根底が出来たような気がしています。

 
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