case study20 「学ぶことは心に翼をもつこと。」
第6回 教育基本法からこぼれ落ちた男女共学
 

息子は1992年6月生れ。PKO法案が可決された翌日に生まれました。
出産した日の新聞には、一面トップで「PKO法案可決」が報じられました。PKO(国連平和維持活動)のために自衛隊が海外へ行く。平和のための派遣とはいえ、直感的に「生まれたばかりの我が子の将来はどうなってしまうんだろう」そんな苦い思いが胸をよぎったこと、今も覚えています。
戦後日本は憲法9条を守り、経済援助だけの立場を守ってきていたのでした。ところが、14年前に平和維持活動として派兵の第一歩が始まり、カンボジアなどで国連平和維持活動の実績を重ねました。さらに2001年のアメリカ同時多発テロ事件のあと、アメリカの要請を受けてイラクに派兵。それも、国連平和維持活動(PKO)の範疇から大きく外れる行為のため、日本は国際平和協力法ではなく、イラク人道復興支援特別措置法を制定し、自衛隊をイラクに派遣したのです。そして今年に入り、欧州を訪問した首相は、アフガニスタン紛争を支援することを掲げ、自衛隊を送ることも辞さない姿勢を示しました。さすがにこの発言に、アフガニスタンで多くの犠牲者を出して世論の反発が高まっている欧州側は、一歩、引いたようですが……。
防衛庁が防衛省となり、さらに憲法九条を「改正」して、自衛隊を自衛軍とする準備を進めている日本。ついにこんなところまで来てしまったのかと実感します。
法律を変えるということはそういうことなのですね。

法律が変えられると、世の中が少しずつ変わってしまう。そう考えたとき、私が心配していることのひとつに男女共学のことがあります。改定前の教育基本法には「第5条(男女共学)男女は、互に敬重し、協力しあわなければならないものであつて、教育上男女の共学は、認められなければならない」とあり、この一文は改定ではなく、全面削除されました。
最初は、今はもうすっかり男女平等、男女共学も当たり前になったのだから、いらなくなった条文なのだろう、くらいに思っていました。けれど改定後、意図的に削除することが重大な問題なのだと気づきました。
かつて公立学校の家庭科の先生だった先輩から、日本は決して男女平等の先進国ではないと教えていただきました。いまだ日本のジェンダーエンパワーメント指数(GEM)は43位と低位なのです。
現在の教育基本法の第二条には確かに「男女平等」の言葉が見られます。「正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」とあり、よく読むと、女性は家を守って協力体制を作って……そんな戦前の伝統的家族、家庭の復権的意図が透けてみえてきます。それは、これまでの政府の言動からも導き出される予測なのですが。
もちろん、家庭は大切。家族は世界でいちばん大切な存在です。でもそれは法律で強要されることではないと思いませんか?
おまけに改定法第10条には家庭教育の責任が記され、第11条には幼児教育に国家や行政が介入することが記されています。本来、その家庭ごとに、若い父母が希望を抱き、心砕いて行なう家庭教育。戦前・戦中の隣組制度など、国家や隣人による教育監視の経験のある人たちは、改定法のその条項に大きな危惧を抱いています。

経済の低迷、少子化問題を、女性が家庭へ回帰することで解決しようとする人たちの短絡的な構図が見えてしまうのは私だけでしょうか。そのために、女子は女子らしい教育をする、そんな方向に世の中が進んでしまうとしたら? すぐに変わらなくても、今0歳の子どもが10歳、15歳になったときのことを考えてみましょう。
このことは、これからも私たちがきちんと見張っていかなくてはならないことの一つだと痛感しています。

幼い娼婦だった私へ

『幼い娼婦だった私へ』
遠い世界のことではなく、私たち女性の問題として考えてみましょう。

ソマリー・マム 高梨ゆうり訳 
文藝春秋 1600円

母親に売春宿に売られたとき、その少女はまだ8歳でした。母は足にしがみつく彼女を蹴り飛ばし、50ドルを握りしめて去りました。少女は殴られ、陵辱され、麻酔もかけずに縫合され、処女として別の売春宿に売られ、それを何度も繰り返さねばならなりませんでした。これは決して昔の話ではなく、カンボジアやタイの現在です。
本書は、そんな少女たちを救うために「アフェシップ」という救援組織を立ち上げ、少女たちを匿い、売春業者の脅しと戦い続けている著者が綴ったドキュメント。著者自身も、カンボジアの少数民族出身で、12歳でレイプされ、売春宿に売られた経験を持っています。「彼女たちが経験したことをわたしも経験してきた。その傷跡を身体にも心にも残しているわたしにとって、彼女たちはまたわたし自身でもある。苦しい体験を共有しているわたしたちは、互いに口をきかなくてもわかりあえる」と著者。
日本で作られたポルノビデオの影響で幼い子どもたちが残虐な行為に晒されている事実。七生養護学校事件(詳細は前回の連載をごらんください)のように性教育が正しく行えない方向へ進んでいる今。セックスが愛の一つの形であり、幸福な行為であることを正しく教えない社会が、どんな結果を招くか。男女が正しく平等であること、男女が共に学ぶことはとても大切なこと。この本は、今私たちが考え、行動しなくてはならないことがたくさんあることを教えてくれます。
みんなの9条

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