case study22 西表島日記
西表日記番外編/第三回うちくい展『オトコゴノミ』開催決定
 

「うちくい展」
2004年に初めて開催されたこの展覧会は、前回の西表日記に書いた通り、私が今映画づくりを始めたきっかけの一つ。 自宅 兼 事務所 兼 オープンスペースである「foo」という建物で最初の展覧会が開催された。我が家で行う展覧会。ちゃんと作家の顔と作品を見なくちゃ、と思い「うちくい展」企画者の小田令子さんに頼んで八重山巡りをした。その時、最後に西表島に入り、石垣昭子さん、金星さんと島の人々と出会った。そこで大きな衝撃を受け、後に、芹沢高志を介した茂木綾子監督と出会いを経て、映画作りはスタート。 映画プロダクションまで作ってしまった次第・・・。今回は、このうちくい展に関して少々。

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「うちくい」とは、八重山地方の方言で「ふろしき」という意味。日本全国どこでもそうだったわけだけど、かつて染織は日本人の日常生活の一部として、自分たちの着る物を手に入れるためにどこでも織られていた。世界中でそうだったんだろう。獣の皮を着る以外は、植物繊維や羊毛、絹などを紡いで織る布で身体を覆うしかなかった訳だから。綿、麻、絹、芭蕉、羊毛などなど、各地で採れる糸や染料、その土地特有の素材を使い、女性は家族のために布を織っていた。当時の権力者への貢ぎ物として税金の代わりに納められたりする過程で芸術品としての美しさは磨かれて行った訳だけど、日常的に使われるものは質素でありながらも、各地の特徴を持つ素朴な美しさを今に伝えている。

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八重山地方でもしかり。特に、アジアから染織文化が直接流れ込んできただろうと思われる西表島には、その亜熱帯性の恵まれた気候もあり、 素材が溢れ、染織も盛んだった。人頭税として、琉球王朝への献上品を厳しく強いられた歴史もある。色をテーマにした映画がここで撮られる事になったのは、素材の豊富さと自然の豊かさ、現代社会から切り離されたような素朴な生活の残る離島環境が大きい。今でも、昔のような暮らしぶりが残っている。とはいうものの、今では機(はた)の音が日常
的に家々から聞こえてくる訳ではない。映画の中で昭子さんは、「幼少時代学校から家に帰るとおばあちゃんは機(はた)に向かって織物をしていたり、芭蕉畑で作業をしていたり・・・そこに茶を届けて作業の手伝いを夕方までしたりして、とにかく日常の中に染織があった」と回想していた。

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「うちくい」は、日常的に織られる着物と比べると少し特別な存在で、 女性が嫁入りする際に織られる布だったらしい。嫁入りする際、頭に被る。「うち被る」という表現がなまってうちくい、またはうちゅくいな
どと変化していったと云う。嫁入り後も荷物を運んだり、産まれた赤ん坊を抱いたり包んだり(今流行のスリングのような感じ?)、腰に巻き付けて衣装としたり、様々に活躍して、親子代々使われていたそうだ。 昭子さんも、何十年も使っているという、おばあちゃんの「ひじりうちくい」を持っていて見せてくれた。はじめはパリッと固い感じの布も、 時を経てだんだんと柔らかく手になじむ触感に変化して行く。時を経ていなければ得る事のできない愛おしい美しさを醸し出していた。

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小田さんは、織物好き。ご主人が石垣島で開業したのをきっかけに石垣島に通うようになり、そこで八重山の布と出会う。島の霊気を纏った布との出会いに、やはり衝撃を受けたそうだ。でも、いわゆる問屋の流通を介して、手に届かないような高額「商品」としてしか扱われていなこの美しすぎる布達の存在をもっと多くの人に知ってもらいたい。伝統的な作品だけでなく、新たな伝統を紡ぎだそうとする作家達の活動の手助けをしたい。そんな思いから、様々な作家を訪ね歩き、その思いを伝え続けた。なんたる行動力・・・。あの人柄がなせる技・・・。そして、着尺となるとどうしても高価になってしまう八重山の織物を、まずは「うちくい」という50cm角程度の大きさの風呂敷として織ってもらい、それを展覧会で発表。実際に見て、触って、購入して使ってもらい、本物の良さを体感してもらいたい!という想いで初回「うちくい展」を企画した。

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安価で便利で種類も豊富な様々な布製品が現在は存在している。でも、 一生大事にできるようなモノってどのくらい身近にあるだろう?使い捨て、また新しいのを買えばいいや、というのが現代社会の日常。そこを、ほんの少し見直してみたら、実は普通の毎日が、とっても心豊かになれる可能性があると思う。一生大事にしたいと思うモノに囲まれて暮らす日常って、贅沢だと思いませんか?確かに買う時は「ちょっと高い・・・」と思うかもしれないけれど、一生自分に幸せをくれるモノと思えばきっと安い買い物。工業化を悪いとは思わない。いいものもたくさんある。でも、素材から作家の手でひとつひとつ大切に紡ぎだされた布の存在感は、心地よく私たちを包んでくれる。
「うちくい展」はその後「ぬぬぬパナパナ」という活動名が定まり、小田さんの類い稀なる努力と多くの方の協力を得て更なる前進を続けている。今回の第三回目のうちくい展も、小田さんの毎度のスーパーなひらめきを元に、ずいぶん前から構想を練り、たくさんの人の知恵を借り、 実現に至った。着尺あり、うちくいあり、着物の小物あり、沖縄だけでなく趣旨に賛同した九州の作家や東京の作家の出品もある。
『ぬぬぬパナパナ』とは「布の端々」という八重山の方言。大阪の小田さんの自宅で、八重山方言辞書を引きながら一緒に名前を考えたのが思い出される。美しい布の端々に込められた奥深いメッセージに、ぜひ耳を傾けてみて欲しい。いつも映画の応援をしてくれる「うちくい展」企画者の小田令子さんに感謝をしつつ、この展覧会の成功を願ってやまない。
皆さん、ふるってお出かけくださいね!すばらしい作品が並びますよ。着物好き、沖縄好き、素材好き、モノ作り好き、自然好き、ゆったりとした時間が大好き。そんないろんな人の心を満たしてくれる事間違いなし。レクチャーや、ワークショップも企画されています。お知り合いにも、ぜひお知らせくださいね。
私もまもなく産まれるはずの赤子(秒読み体制です!)と共に店番しているかもしれませんので、見かけたらお声がけ下さい。
第三回うちくい展「オトコゴノミ」〜作る。縫う。着る。

2008年春、映画づくりのきっかけとなった、「うちくい展」の第三回目が京都と東京で開催されます。今回はタイトルを「オトコゴノミ」と題し、沖縄を中心とした各地の若手作家による、男女ともにきられるユニセックスでシックな大人のための着尺を展示・販売します。着物のための小物やうちくい他、様々な作品が展示されますのでお楽しみに!両会場とも、期間中様々なレクチャーやワークショップを企画しております。ぜひふるってご参加ください!

展覧会、イベント、ワークショップの詳細はこちらをご覧下さい。
nunupana.com/uchikui/future/index.html#16

京都展
日時:2008年2月29日(金)〜3月3日(日)
11:00~19:00(最終日は~17:00)
会場:「空 鍵屋」京都市東山区祇園町南側花町570-107
地図:www.kagizen.co.jp/g_map.htm

東京展
日時:2008年4月10日(木)〜13日(日)
11:00~20:00
会場:「ラミュゼdeケヤキ」東京都内藤町1−6

 
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